風の子坂を駆けぬけて
インターホンを押すだけで軽く5分は経とうとしていた。


小さい頃は頻繁に遊びに行っていたというのに。





♪ピンポーン


深呼吸してドアが開くのを待つ。


「はーい。あら、知優ちゃん。こんにちは」


ロングスカートを穿いたメガネ姿の小柄な女性。
健の母親だ。


「こんにちは。あの、これ、連絡帳届け来ました」

「わざわざありがとうね。あ、そうだ。ちょっと中入って待ってて」


こっちの返事を待たずして、健の母は彼女を玄関へと招き入れると、颯爽と部屋の奥へ行ってしまった。


知優は急な展開にとまどいつつ、家の中に入ると、ランドセルを下ろして玄関の上がり口に腰かけた。

久しぶりに健の家の匂いを感じてふと、懐かしさを覚える。



「ごめんねー。待たせて。お礼って言っちゃなんだけど、持っていって」


健の母が戻ってくると、袋に入ったお菓子の詰め合わせを彼女に渡す。







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