風の子坂を駆けぬけて
「あ、ありがとうございます。あの…、健君は」

「もう大丈夫よ。熱も無いし、明日には学校行けると思う。あ、クラス違うのよね、ちょっと残念よね。班も変わっちゃったし、健もね、寂しがってたのよー」

「え、そうなんですか」

「ふふ。今起きてたはずなんだど…ちょっと呼んでこようか?」

「あ、いえ、病み上がりに悪いので、大丈夫です。もう帰ります」


そう言うと急いでランドセルを背負う。


「そう?じゃあ、知優ちゃんも気を付けてね。ありがとうねー」

「さようならー」


家の門を出ようとした時だった。


「ちゆーちゃん」


後ろから彼女を呼ぶ掠れ気味の声が聞こえた。


振り返ると、ドアの前にパジャマ姿の健がいた。


「たー君」

「連絡帳、ありがとう」

「ううん」


何だかたどたどしい会話に、照れくささが入り混じる。


「あのさ、鼓笛隊のパレード見たよ。ちゆーちゃん、かっこよかったよ。いつか言おうと思ってて…」


「そっか、ありがとう。頑張ったかいあった」


もっと色々話したいことはあったけど、彼の体調の事も考えると、どうしても短めの言葉が出てきてしまう。









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