風の子坂を駆けぬけて
「クラス違うけど、また、一緒に帰ったりしような」

「……うん!」



最後に互いに手を振って別れた。


彼の元気そうな姿を見れただけでも十分嬉しいのに、思ってもみない彼の言葉に、知優の気分はすっかり舞い上がっていた。

緊張から打って変わって、ふわふわと足取りも軽やかになってしまうくらいに。



健からもらう言葉には魔法でもあるのではないか、そんな錯覚さえ起こしそうな程、彼女にとっては何よりのパワーになった。




クラスが離れ、ちょっとばかり疎遠になっていた2人だが、この日を境にまた、元の距離に戻ろうとしていた。






ほんの少し、胸の中をくすぐるリズミカルな風を吹かせながら。




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