風の子坂を駆けぬけて
小さく大きな教室
運動会後、秋の遠足に音楽会と、定番の学校行事も一通り終え、少しずつ寒くなってきた頃。
仲良し4人組みにある事件が起きた。
事の発端は明日香の何気ない一言だった。
「見て見てこれ、新しいペン買ったんだ!」
「キレイだねー、いいなあ。どこで買ったの?」
「駅の中に入ってる、えっと雑貨屋で…」
「あー!それ早速使ってるんだ?私も明日持ってこよう」
知優と明日香の会話に胡桃が割って入ってくるなり、知優には検討のつかない内容。
「くーちゃんも持ってるの?」
「うん、土曜日ね、あっちんと出かけたんだー。そこでね、お揃いのペン買ったんだよね」
「そうそう。この色すごい気に入ってさー」
「私はね、ピンクにしたんだー。てかさ、電車で出かけたのって初めてだよね」
楽しそうに出かけた時のことを話す2人を前に、知優は話の内容に付いていけず、ぼーっとしていた。
(何、どういうこと?くーちゃんとあっちんで出かけてたってこと?私、何も…)
「へぇ、そうだったんだ」
結局その場で言いたいことは言えず、次の授業が始まり、この話は遮られた。
何だか釈然としない知優はモヤモヤを抱えたまま、放課後を迎えた。