風の子坂を駆けぬけて
明日香と沙耶はそれぞれ家の用事があり、先に早く帰っていった。
久しぶりに胡桃と知優2人だけの帰り道。
知優はどうして出かけることを誘ってくれなかったのか、気になって仕方なかったけれど怖くて聞けないでいた。
「明日ね、ダンスの日なんだけどね、新しい曲でやるんだよー」
「そうなの?どんな曲?」
「今流行ってるじゃん、4人組みグループでさ、CMでも流れてるよ」
本当はこの話題で話したい訳ではない。
でも、逃げのように今は話の流れに乗るしかなかった。
ところが、胡桃の家がある通りの曲がり角が見えてきた頃、別れ間際に知優は重い口を開いた。
うっかり心の声が漏れるように。
「あのさ、あっちんと出かけた時、何で誘ってくれなかったの?さーちゃんもさ」
道路の白線の上をなぞるように見つめて歩く。
「えー、だって」
知優は下を向いたままギュツと目をつむる。
「ちゆー、お休みの日っていつも家族で出かけてるじゃん。どうせ誘っても、行かないかなぁって。あっちんの家って、お休みの日でもおばさん達仕事してるから、留守番ばっかで嫌なんだーって。だから、一緒に行ったの」
何の悪びれもなく、淡々と理由を説明する胡桃。
ちゃんとした理由があった。