風の子坂を駆けぬけて
けれど、やっぱりすっきりしない。
「そっか、あっちんの家、忙しいんだね」
「ねー。さーちゃんもさ、一応誘ったけど、断られちゃって」
「あ、そうなんだ」
まるでロボットのように、知優は表情も言葉もまるで温度を無くした。
手が冷たいのも寒さのせいだけじゃない気がする。
「じゃあね、また明日ー」
「バイバイ」
いつものように手を振って別れた曲がり角。
強張っていた力が抜け、途端に歩く速度が緩まる。
『どうせ誘っても…』
『さーちゃんも一応誘った…』
先ほどの胡桃の言葉を反芻する。
どれもこれも、胸をえぐるように痛むものばかり。
(何でもいいから、私も誘って欲しかった…。私だけ、何で…。)
今すぐにでも涙が出そうになっていたが、いつの間に堪える力がついたのか、帰宅する頃には涙も乾いていた。
冷たい風がまるで心の中にも入り込むようだった。
この事があってから、しだいに知優は3人と距離を取るようになっていった。
休み時間も一人で絵を書いていたり、帰りもわざと早く帰った。
知優には、あの3人以外特に仲良くしている子も居なかった。だから、自分で進んで一人になっていったのだった。