風の子坂を駆けぬけて
せっかく同じクラスになれたというのに、虚しい。


様子がおかしいことには胡桃達も気づいていた。

4人で回して交換日記も、知優で止まっていた。




気まずくなって数日の図工の時間のこと。

大好きな絵画の授業で、知優は休み時間も没頭して描いていた。


チャイムが鳴ったことさえ気づかず、クラスメイト達がみんな校庭へと出ていき、教室がしんと静まり返ってやっと顔を上げ気づく程。


一人の教室、前にもこんなことあったなと思い出す。



寂しい思いも感じつつ、やはり胡桃達のわだかまりが引っ掛かり、一人でいた方が何となく気が楽だったりもしていた。

一緒にいたら、きっと絶対上手く笑えない、雰囲気悪くなるだけ。
だったら、最初から一緒に居なければいい、それが知優が自分の中で見つけた答えだった。



「ちゆー」


絵の具の筆を水ですすいでいると、沙耶の声がして振り向く。


「残ってたんだ?」

「うん、さーちゃんは校庭行ってたんじゃないの?」

「ううん、先生のとこ行ってた。私もう帰るから」

「ふーん。…えっ?早退するの?」


筆を慌ててパレットに置くと、体ごと沙耶のいる席の方に向き直る。

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