風の子坂を駆けぬけて
予想外にも広範囲に牛乳が飛び散ったもので、びくっと体が反応した。


「けっこー飛んだ!」

「すげーウケるんだけど」


謝るどころかむしろ楽しんでるこの状況。


知優は言い返すことも出来ず、体は固まったまま、ぽたぽたと落ちる牛乳。




高い声で大笑いするみんなの中で、知優はゆっくりポケットからハンカチを取り出す。


濡れた前髪と頬を拭う。


でもこの時、頬を伝っていたのは牛乳ではなく涙の方だった。



キンコーンカンコーン


笑い声も給食の終わり時間を告げるチャイムも、どこか遠い世界のことのように感じる知優。



それぞれ片づけ始める中で、俯いたまま泣いた。

出すこともなかった声も、今は泣き声となっていた。



しだいにざわつき始める教室。


向い側の班の子からの目撃談が上がり、犯行の男子が問い詰められる状況へと変わっていった。
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