風の子坂を駆けぬけて
「えー、もう気づいてる子もいるかな?今日は転校生が来ています!」
先生の声も掻き消される程、クラス中がわーっと声を上げた。
「はいはい、静かに。じゃあ、いいわよ、入ってきて」
そう促され、廊下から入ってくる男の子。
「はじめまして。丹羽響です。よろしくお願いします」
緊張した面持ちながら、どこか堂々とした佇まいですんなりと挨拶を済ませる。
クラスメイトの男子達より少し背が高く、長い前髪も斜めに分けられ、大人っぽい印象を受けた。
装いもフードつきの黒いパーカーにデニムと、シンプルなのにセンスさえ感じられる。
早速クラスの女子達はキラキラと目を輝かせ、髪の毛をしきりに気にする子までいた。
胡桃も彼を見つめる視線は熱いものだった。
この日の帰り道の彼女達の話題はもちろん丹羽君。
胡桃を筆頭に色んな妄想を膨らませた。
スポーツが得意そうだという明日香の提案から、バスケやバレーやサッカーに剣道と、どれが似合うかなど盛り上がる始末。
まだ誰も彼と話してはいないため、妄想が止まらなくなっていた。