風の子坂を駆けぬけて
明日香と沙耶と別れ、知優と胡桃2人だけになると、知優は気になっていたことを彼女に告げる。
「くーちゃんてさ、あの子とはどうなったの?」
「あの子?」
「ほら、えっと、スイミングで一緒のだいちゃんだっけ?」
「あー!だいちゃんね、仲良いよー」
「好き、じゃないの?ライバルがいてさどーのって」
「うん、そうなんだけど。でも、響君もいいなーって」
「…えっ?」
知優は一瞬固まった。
「だって、まさかあんなイケメンが転校してくるなんてー思わなかったんだもん」
「うーん。じゃあ、だいちゃんはライバルに譲っちゃの?」
「それはない!」
「じゃあ、どうするの?」
「まず、響君が好きかどうか確かめる」
胡桃の惚れっぽさは、今に始まったことではないと知っているものの、知優は何だかノリ気がしないのだった。
せっかくこれまで、二度も2人で恋の応援をし合ったというのに、これでは拍子抜けだ。
むしろやり直しに近いのかもしれない。
それでも胡桃は好きな人の事は知優にしか教えていなかったし、また知優も同じく、健を好きなことを胡桃以外に誰にも教えていなかった。