風の子坂を駆けぬけて
「ちゆーちゃん、きょういえであそぼー!」
「うん、いいよ」
「やった!おかあさーん、あのねっ」
小さな声でやっと知優が答えると、後ろを歩いていた母に、大喜びでそのこと真っ先に伝えた。
健の家は兄と二人兄弟で、女の子が好むような物は無いと思われるが、実はあったりする。
それは「おままごとセット」だ。
知優と親しくなってから、いつしか置くようになったのだ。
そもそも2人が親しくなったのは、これまた親同士の繋がりという安易なきっかけだった。
けれど、健の性別問わず、じゃれつくような明るい性格もあってか、知優の極度の人見知りさえも、いとも簡単に解きほぐしていたのだった。
たまに度が過ぎて、先生に怒られて、泣きべそをかいてる場面もちらほらあったり……。
それでも知優はそんな健に憧れていたし、気にかけて側にいてくれる彼の事が好きだった。