風の子坂を駆けぬけて

――――――——――*゜――*゜――


お昼休み。

満開を迎えた桜の木がある校庭の一角では、女子の声援が飛び交う。


そこでは6年の男子達数人がバスケをしていた。

彼女達が声援を送っていたのは、丹羽だった。


頭一つ分大きい彼は遠くからでも目を引く存在で、今や他のクラスや他の学年からも注目の的となっていた。



そんな黄色い声を、知優と明日香は図書室でBGMのように聞き流していた。


彼女達は今日は当番の日だった。


「まーたキャアキャア言ってるね。どんだけ人気あるんだか」

他人事のように呟きながら、返却された本を片づける明日香。


「ほんとー。ファンクラブできてるってウワサ聞いたよ」

カウンターにいた知優は頬杖をつきながら手元の本をめくる。


「それって、5年生の子達が作ったって。同じ鼓笛隊クラブの子が言ってた」

「じゃあ本当だったんだね!」

「みたい」

明日香はやれやれと肩をすくめながら知優の方を振り向く。

「でもさー、丹羽君て、確かにイケメンではあるけど、何考えてるか分からないよね。怒ってるとことか、見たことないし」

続けて明日香は言う。













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