風の子坂を駆けぬけて
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お昼休み。
満開を迎えた桜の木がある校庭の一角では、女子の声援が飛び交う。
そこでは6年の男子達数人がバスケをしていた。
彼女達が声援を送っていたのは、丹羽だった。
頭一つ分大きい彼は遠くからでも目を引く存在で、今や他のクラスや他の学年からも注目の的となっていた。
そんな黄色い声を、知優と明日香は図書室でBGMのように聞き流していた。
彼女達は今日は当番の日だった。
「まーたキャアキャア言ってるね。どんだけ人気あるんだか」
他人事のように呟きながら、返却された本を片づける明日香。
「ほんとー。ファンクラブできてるってウワサ聞いたよ」
カウンターにいた知優は頬杖をつきながら手元の本をめくる。
「それって、5年生の子達が作ったって。同じ鼓笛隊クラブの子が言ってた」
「じゃあ本当だったんだね!」
「みたい」
明日香はやれやれと肩をすくめながら知優の方を振り向く。
「でもさー、丹羽君て、確かにイケメンではあるけど、何考えてるか分からないよね。怒ってるとことか、見たことないし」
続けて明日香は言う。