風の子坂を駆けぬけて
「そうだったんだー。あっちんも丹羽君とよく話してるし、好きそうだなって思ってたけど」
胡桃はどこかほっとしたような顔で笑った。
実は、丹羽のことをどう思っているのか、それとなく明日香に聞いて欲しいと知優に頼んでいたのだった。
「で、結局くーちゃんは今、誰を好きなの?」
知優にズバッと問われ、うーんと腕組みをしつつ空を仰ぐ胡桃。
どっちも好きだと言っていたあの日から、2年。
話に聞いていると、確かに胡桃の話す中には『だいちゃん』も『丹羽君』も、両方含まれていた。
「最近いよいよかなーって思ってたとこでさ」
「いよいよ?」
「うん、告白!」
「……、えっーーーー!!」
数秒の間ができる程、知優はまさかの展開に目を丸くした。
「片思いも楽しいとか言ってたのに…」
「だってだって、だいちゃんも来年高校生なんだよ?今はまだ同じスイミングに通ってるけど、それも今年で最後なんだもん」
「そりゃあそうだ…」
「だからね、そろそろ告ろうかなって思って」
「あ、じゃあ丹羽君はなしってことになるの?」
「それはー、だいちゃんがダメだったら、丹羽君に告るってことで」
「あー、はあ、なるほどね」