風の子坂を駆けぬけて
この時、知優はどうしても明日香の気持ちを尊重したいと強く思った。
いい奴を、補欠扱いになんてされて欲しくないと。
まだ彼とはろくに話をしたことすらないくせに、何故か悪い奴には思えない自信があったのだ。
心から幼馴染の告白を応援したいのに、一方では丹羽には告白しないで欲しいと願う自分がいる。
けれど、これから起きる出来事が、この時揺らいだ本音は間違いじゃなかったと、背中を押す勇気になることを、後に彼女は知ることになる。
漫画の中だけだと思っていた話が、自分にもなりえてしまうなんて、と。
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休み時間、丹羽の席に集まる、明日香と胡桃の姿。
知優にはもうすっかり見慣れた光景だったが、一緒に絵や漫画を描くことが減ったことは寂しくもあった。
あまりにも退屈な時は、わざわざ隣のクラスにお邪魔して、沙耶と絵を描くこともあった程。
そんな頑なな知優を胡桃は良くも悪くも気にしていた。
体育の授業のサッカー。
ウォーミングとして、校庭を1周、ボールを蹴りながら走っている時のことだった。