風の子坂を駆けぬけて
青空が冴えわたる昼の午後。
それは梅雨の貴重な晴れ間だった。
せっかくだからと、この日の図工クラブでは屋上で空の絵を描くこととなった。
知優と沙耶は2人並んでキャンバスを広げる。
校庭では運動系のクラブ活動をしている児童達の声で賑わっていた。
野球をしている中には健の姿があった。
知優はそくざに彼を見つけるとドキドキして、嬉しくもなった。
今年久しぶりに同じクラスになれたというのに、知優はそのドキドキのせいで健に話づらくなっていたのだった。
「何見てるのー?あ、さては丹羽君かなぁ?」
「ち、違うよ!」
慌てて取り繕う知優を、沙耶はにたりと怪しく微笑む。
「わかった。健君だ」
「えっ」
「当たりだ」
本当に言い当てられ、同様を隠せない知優は鉛筆を地面に落とす。
「たまたま、視界に入って」
「えー、そう?てっきりちゆーは健君好きだと思ってたけど。幼稚園の時からずっと仲良かったし、そうじゃないの?」
「…じゃなく、ない」
「やーっぱり」
沙耶の論破するような口ぶりには、知優は言い逃れができない。
「えっと、あのさ、このことは誰にも」
「言わないよ。でもそっか、やっぱりか」
沙耶は何か納得した様子で、ほっとするような困ったような、そんな顔でキャンバスに向き合う。