風の子坂を駆けぬけて
この好きが恋かどうかは、まだはっきりはしていなくて、ぼんやりしていた。
そんな気持ちに拍車をかけることになったのは、他でもない、身近な存在である、“友達”だった。
胡桃には恋しているという気持ちがはっきりしている男の子がいた。
同じクラスのスラリとした身長で、爽やかな印象の子だ。
ほぼ毎日胡桃からその子とのことを聞かされている。
一緒にシーソー乗ったとか、おませな具合に、手を繋じゃったとか。
それはもう本当に嬉しそうに話すのだ。
周りに聞こえてしまう恐れなど気にせず。
一応、ないしょ話の定番の、耳に向けてこっそり話すしぐさはするが、基本的に声は小さくないから意味がない。
聞かされる側の知優は別に呆れてもいなかったし、むしろ興味はあってドキドキしていた。
だから、いつしかそのドキドキが自分の身に置き換えるようになったのだ。
普段と同じように、健と2人きりでするおままごとさえも、どこか意識してしまう今日この頃。