風の子坂を駆けぬけて
話ながらだったというのに、沙耶はすっかり空の絵が進んでいた。


雲の形もしっかり描かれている。


それに比べて知優は度々手を止めていたせいか、薄い水色一色だけがキャンバスに塗られている、極端に質素なもの。
空かどうかは見ただけでは分からない。



明日からまた一日雨が続く予報。

今度はいつ晴れるか分からない。

その時にクラブ活動があるかも分からない。



今日限りの今日だけの空を描く、これは特別な時間だったのだ。



この日を境に、沙耶は学校を休むようになり、クラブ活動に顔を出すこともなくなっていった。



クラスが離れた沙耶とゆっくり話せて、好きな事に没頭できる唯一の時間だっただけに、寂しさと退屈さが日ごとに増した。


噂では、体調が悪いらしいと聞く。
けれど誰も本当の事を知らなかった。


4人で過ごした時間がどんどん遠のいていくのがわかった。


沙耶がどうしているのか考える度、図工クラブで屋上から見たあの空のことを、同時に思い出すのだった。





< 81 / 107 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop