風の子坂を駆けぬけて
「ちゆーちゃん、バイバイ」
「バイバイ」
6年になってから、知優はやっと胡桃達以外の子とも普通に話せるようになっていた。
随分時間が掛かっていたが、これも彼女の成長した部分でもあった。
それまでずっと胡桃、明日香、沙耶の3人といることが多く、今では彼女達以外の子とも休み時間を過ごすようになったり、放課後に残って話をしたりすることもあった。
ただ帰り道はいつもの4人で帰るのが決まりみたいになっていた。
けれど今は明日香と2人で帰ることがほとんどだった。
胡桃は習い事のために、度々親に迎えに来てもらっていたし、沙耶も休みで一緒に帰ることはなくなっていた。
梅雨明け宣言をした7月半ば。
(一人で帰るのは何回目かな…)
いつもは一緒に帰る明日香は今日学校を休んでいて、委員会活動で少し遅くなった放課後。
最終下校時刻を告げる放送に、知優はやけに物悲しさを感じた。
少し早足気味に昇降口の階段を降りる。
そんな彼女を廊下の窓から見かけるなり、突然走り出すポニーテール姿の子。
慌てて靴に履き替え、階段を降りる前に叫んだ。
彼女が角を曲がる寸前に。