風の子坂を駆けぬけて
春の風
小学校生活、最後にして最大のイベントがやってきたのは秋。
親元から遠く離れた場所での宿泊は、林間学校で事前に“感覚”を掴みつつも、ワクワクとドキドキと少しの寂しさを混ぜ合わせたものだった。
そんな修学旅行の班はとても一大事。
知優と胡桃と明日香は約束もせず、当たり前のように同じ班になった。
男子メンバーは健と健と一番仲の良い、拓未と、丹羽が加わった。
健達と割と親しいようで、丹羽を真っ先に誘ったのは健だった。
修学旅行は科学館や博物館を見学し、午後からは牧場へ社会学習を兼ねて訪れたのだった。
ここで思わぬ事件が知優に起きてしまう。
それはあの日芽生えた気持ちに、どんな変化をもたらすのか、彼女次第でいかようにも変わる。
昼食は牧場で取ることになっており、班ごとにそれぞれ好きな場所を選んだ。
広大な面積を誇る牧場は、乳搾りや乗馬体験だけでなく、アルパカやヒツジやウサギなどの動物とのふれあい広場もあった。
緩やかな丘には水車や花畑が広がっていた。
知優達は水車小屋の近くでご飯を済ませると、花畑へと繰り出した。