風の子坂を駆けぬけて
花畑にはコスモスが咲き乱れていた。

青空の下、花に囲まれた中を走るのはとても気持ちがよかった。


走り出した健達を追いかけるように続く、胡桃と明日香に知優。


「かくれんぼしよーぜ!」

ようやく追いつくなりそんな提案をした健。


「まじでー?」

「俺が鬼やるからさ、一番に見つかった人はバツゲームな!」

「こら、勝手に話すすめるなー」

明日香が健の肩を揺さぶって反撃した。

「いいじゃん、せっかくだしやろう!」

胡桃の生き生きした笑顔には、反対する人は出てこなかった。



唐突に始まったかくれんぼ。



小さい頃はど定番のように遊んでいたはずだ。
でもこの頃はほとんどしていなかった。

少しずつ遠ざかっていた遊びなだけに、照れと懐かしさと修学旅行という特別感で、彼女達のわくわくはさらに高まっていた。



明日香は知優の目の前を走っていたが、気づけば姿を消していた。


背の伸びたコスモスは少ししゃがめばすっぽり身を隠してしまえるほどだった。

右も左も同じような景色が広がり、花畑は本当に迷路のようだった。


目印といえば中央付近にある看板に、水車小屋。


鬼役の健がいたのは看板だ。
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