風の子坂を駆けぬけて

その次の話題は流れ的にお決まりの『自分の好きな人』だ。

ここでついに、胡桃は今付き合っている人がいると大発表したのだった。


もちろん知優以外は知らなかったため、驚きの声が上がった。
それも相手が中学3年だということもあってか、一際だ。

一人、大きな声で叫んだため、見回りにきた先生が部屋に注意しにくる始末。



話題の中心が自分ではなくなったため、知優はひとまずほっとしていた。



それぞれ好きな人を打ち明け合い、卒業までの間に告白するかどうかということにまで発展し、みんなの瞼が重くなった頃は2時になっていた。


知優はうとうとする中、丹羽に掴まれた手首をそっとなぞるのだった。

みんなは知らないあの出来事……。




掴まれた時の少し痛いくらいの強さと熱は、修学旅行の後でさえ、知優はなかなか忘れることはできなかった。




――――――——――*゜――*゜――




修学旅行が終わると、卒業式に向けて様々な準備が少しずつ進み始めた。

彼女達はまだ実感は沸いていなかったが。
それよりも、知優と丹羽のウワサは思った以上に尾を引いていたため、恋愛トークもあちこちで流れ、卒業という雰囲気ではないのだった。
< 92 / 107 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop