風の子坂を駆けぬけて
雨の日や風が強い日は、休み時間に外に無理に促されることもない、ラッキーな日でもある。
6年生になっても知優は相変わらず、校庭に出ることは好まなかった。
それより、漫画の続きを進めたい気持ちが一層強くなっていた。
あの彼の一言はかなり効果があったらしい。
胡桃や明日香の勉強会も続いていたが、健が丹羽とよくつるむようになってからは少し減っていた。
そんな頃、季節はすっかり冬になっていた。
知優と明日香の図書当番の日の放課後、珍しく胡桃の姿もあった。
「ちゆー、この本読んだことある?」
明日香がふいに持ってきた本は、『天の森と神々』という結構分厚い本だった。
森と星空が描かれた、写真のように繊細で美しい表紙。
「ううん。ないよ。すごい綺麗な絵だね」
「移動図書館で見つけたんだー。ネタバレできないけど、超面白いよ!本当にあったらいいなーって物語」
「へー、いいなあ。次読もうかな」
「ほんとおススメ!」
明日香はスポーツも好きだし楽器も好き。そして本もそうだ。色んな分野においてわりと物知りで、こうして知優が好みそうな本も度々教えてくれるのだ。