風の子坂を駆けぬけて
一方で胡桃は2人の会話などまるで耳に入っていないようで、部屋の隅っこの方で手紙を書いてた。

何やら明日だいちゃんに記念日だからと渡す手紙だという。



ここで書かなくてもいいのではとふと思った知優だが、あまりにも嬉しそうにしている姿を見たら何も言えなかった。




3人での帰り道も何だかとても久しぶりだった。



風の子坂では枯葉がくるくるっと回って何度も飛ばされていた。


鼻先がツンと冷たくて痛い。


やけに寒いのは、寂しいのは、単に季節が変わったせいではない気がしていた。

そう気づいた知優は白い息とともに声を発していた。


「ねぇ、さーちゃんって最近学校来てないよね」

「あ、そうだね。全然見てない」

「修学旅行には来てたよね」


明日香と胡桃はすぐに反応した。

3人で顔を見合わせる。


「……どうしたんだろう」

明日香は腕組みをして首をひねる。

一緒にいたはずなのに、本当は何も知らないことに今更ながら気づかされ、彼女達の顔色は陰るばかり。


「直接聞きに行ってもいいけど……、とりあえず明日、隣のクラスの子か先生に聞いてみるよ」

「うん。そっか、ありがとあっちん」

胡桃は遠慮がちに言う。




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