またね、と言って君は僕に背を向けた。
あ、と初めに声をもらしたのは僕だった。
最期まで育ちきれなかった橙の玉が、僕の足元で光を失っていた。
それがなんとも呆気なくて、僕は灰になったそれを吸いつけられるように見下ろしていた。
「ねえ」
はっきりとした、でもどこか堅い声が目の前から聞こえてきた。
その時初めて、僕は線香花火の持ち手の部分をぐちゃぐちゃに握りしめていることに気づいた。
はっとして顔を上げると、迷子になった子どもみたいな目で、だけど必死に笑おうとする彼女の姿が目に映った。
「……うん?」
そっと彼女に先を促す。
彼女の線香花火もとっくに地面に落ちたみたいだった。
勝負の行く末は見ていなかったけれど、おそらく彼女が勝ったのだろう。