またね、と言って君は僕に背を向けた。
「去年の夏も、こうやって一緒に花火、したよね」
「そうだね」
「来年も、一緒に花火しようねって、約束したよね」
「そうだね。まさかお墓ですることになるとは思わなかったけど」
彼女のまねをしてからからと笑ってみる。
うまくできただろうかと僕は不安になった。
彼女は先ほどの笑顔のまま、ぐしゃり、と顔を歪ませた。
「あのね、来年も、一緒に花火、したいなって」
彼女のその願いに、僕は何も答えない。
否、応えることができない。
今この瞬間が奇跡なのであって、これから先、そう簡単に僕と彼女がこうやってともに過ごすことはできないだろうと僕はひしひしと感じていた。
「わかってる、わかってるんだよ、これがさいごなんだろうなって、でも、」
――なんであのとき、来年も再来年も、これから先ずっと一緒に花火をしようねって約束しなかったのかなあって。
声を震わせてうつむく彼女の肩に、僕はそっと手を伸ばす。
しかし無常にも僕の手は、小さくなった彼女の肩をすり抜けていくだけだった。