金魚鉢には金魚がいない
悲劇のヒロインは、いつだって己の足元をすくう。淋しさは、望まなくともこんなにも簡単に染み入ってくる。だから、それ以外はちゃんと前を向いていたかった。
姉はいつしかそんな事を言っていた。そうでもしなければ、私達は簡単に、目に見えないもの達に潰されてしまうのだと。
姉は彼女に希望を与えたわけではなく、もっと雑に生きていいのだと教えたかったのかもしれない。世の中に、どうにもならない事なんて、殆どありはしないのだから。
それでも運命は、まるで私達を卑下するかのようなシナリオを用意する。
神様は、きっといないのだろう。
「ある日、私はバイトでへとへとになって遊びに行く気力もなくて、家で寝てたの。そしたら深夜にアリーからの着信が鳴った。」