金魚鉢には金魚がいない
 「鍵があいていたの。女の子一人住むアパートで。」
 そう言った姉の手が震えていたのは、明け方の冷え込みによるものではなかった。


 「ドアをあけた時、シャワーの音がした。もう気が狂ったみたいにバスルームに飛び込んだけど、彼女に息はなかった。偽物みたいな真っ赤な血がバケツをひっくり返したみたいに床を染めて、私は警察に電話をした。すぐに警察がきて調べ回ってすぐに自殺だと判断されたけど、それだけじゃなかったの。
彼女は…」



 彼女は、犯されていた。
 陰部に精液が付着していた事と、もみ合ったような新しいあざや傷が体の数ヶ所から発見された。

 警察は姉に随分と厳しく責めた。
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