金魚鉢には金魚がいない
 「悲しかったとか、仕方ないとかではなくて、ただ単にどうにもならなかった。」
 姉は言う。
 生涯に一度の恋があるとすれば、姉にとって彼はそんな存在だったと。
 夢追い人の恋人は、ただそれ故に、その存在でさえ捨てるしかなかったのだと。
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