mariage~酒と肴、それから恋~《5》
恋心を告げずに、これまで会いに来てた。


いつも、つけ入る隙がなくて、つけ入る隙を探っては、毎年断念してがっかりしながら帰る。


もう忘れよう。

毎年思ってる。


先の見えない関係に、区切りをつけなきゃと思いつつ、毎年私の梅酒を受け入れてお返しをくれるから、細々と断ち切れずにいた。


今回こそは、もう終わりだろうな。

忘れよう。終わらせるのは簡単だ。

梅酒を渡さなければ終わる。簡単に終わる。


……終わらせられる?


10年は、過ぎれば早かったけど、やっぱり長くて、重いよ……



私の憂いに関係なく、仕事に追われて日々が過ぎていく。

逆に仕事に没頭できて助かったけど。


忘れることも、新しい恋が舞い込むこともなく。

夏が終わり、きちんと毎年恒例の新米と有機野菜は送られてきた。


これじゃ堂々巡りだと思っていた、秋も深まった頃。


突然、成海さんからのメールが届いた。


『燻製食べにきて』
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