mariage~酒と肴、それから恋~《5》
燻製。上手く出来たんだ。

庭。どんな風に出来上がったのかな。

また心が弾んで、心が痛くなった。


約束の日。

1本の梅酒を持って車に乗った。


1リットルのビンの中に、10年熟成させた梅酒が入っている。

これは、社会人になって最初に一人で作って、最初に成海さんに分けてあげた梅酒だ。


梅酒には賞味期限がなく、上手く保存すれば、何10年も熟成させることができるっていうから。

最初に作った記念にと、自分用を飲みきらずに長期熟成させてみようと、小瓶に移し換えて大事に保管してきた。


10年ものの梅酒は、どんな味わいになっているんだろう。


一つの大きな決心と共に、車を走らせる。


成海さんの家にたどり着き、車を降りると、冷えた空気に燻製の匂いが漂っていた。


「きたきた、いらっしゃい、月子。燻製できてるよ。おいで」

成海さんは、待ってたよと、ニコニコしながらヒラヒラ手を振ってきた。


どんな顔して会えばいいんだろうと悩んでいたのに、拍子抜けするくらい明るく出迎えられて、腹立たしい。


――何よ、私の告白なんて、スルー??

「あら、今日はきちんとヒゲ剃ってるんですね」

ちょっぴり嫌みったらしく言ってみる。


「まぁね、たまには。それよりこっち」

なぜか片手にヤカンを持った成海さんは、庭の一角に私を誘導した。
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