mariage~酒と肴、それから恋~《5》
「燻製するのって、サーモンとかチーズとかゆで玉子ですよね。あとはベーコンとか?それから…」


「何でも燻製にできるみたいだよ。野菜とかも」


「へー!野菜!燻製にして美味しいの?この辺の野菜生で食べても美味しいのに!」


「どうだろうな~?上手く作れるようになったら月子にも食わせてやるからな」


そんなこと言われたら嬉しくてワクワクする。

「楽しみ。期待してますね。田舎だから煙気にせずにできるから良いですね。のどかだし。
私も支店に異動したいな~」


「やめとけやめとけ。何にもなくてつまんないぞ?支店なんて」

ははは、と他人事のように笑った。つまんないって、自分とこの仕事なのに。


支店では店長を勤めている成海さんだけど、本社での仕事に比べたら、随分暇だろう。


仕事、もうどうでも良いの?
あんなに仕事人間だった人が。


作業する成海さんを見つめる。

別に枯れ専って訳じゃないんだけど。

多少油の抜けた、疲れたような哀愁漂う背中を見てると、頑張れって抱きしめたくなる。


――異動は、成海さん自身の希望だった。
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