あたしのオキテ-切なくて、でも忘れられない
それから、疲れ果てて寝てしまうのは、翔くん。あたしは、いつも翔くんの寝顔をこっそり見る。


寝てしまうのがもったいなくて。


次にいつ会えるか、分からないんだもん。一分でも無駄にしたくないじゃん。


翔くんの寝顔は、ちょっとぶさいくだ。パグみたいだな。寝息がすーすー聞こえるのまで、恋しい。



いっそこのまま二人で死んでしまったら、翔くんはあたしだけのものになるのに。



あたしは翔くんの手を握り締めた。翔くんの寝息が止まった。




起こしてしまったかも、しれない。



今度はあたしが寝たふりをした。



翔くんはそっとあたしの手を振りほどいた。



それから、また、安らかな寝息の音が部屋に響いた。



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