目覚める度に、傷ついて
そう思い、あたしはぎこちなく笑顔を浮かべた。


ユメノへ向けて笑顔になる事があるなんて、思ってもいなかった。


「お、おはよう、ユメノ」


あたしはできるだけ自然にそう言った。


あたしは奏だ。


ユメノはあたしの友達だ。


怖がる必要なんてない。


ユメノは特に気にする様子もなく、あたしを追い越して教室内へと入って行った。


あたしはその後を追いかける。


「奏、昨日の映画見たぁ?」


「えっと……見てない……」


「なんで? 奏が好きな映画だったのに」


ユメノが目をパチクリさせてそう言った。


だって、昨日はあたしが自殺を実行に移した日だもん。


映画なんて見るワケがなかった。


だけど言えない。


「えっと……宿題……してて……」


あたしはしどろもどろになりながらそう返事をした。


「はぁ? 奏が宿題とか嘘でしょ?」


ユメノはそう言っておかしそうに笑った。


あたしは戸惑いながらも一緒に笑う。
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