目覚める度に、傷ついて
☆☆☆

それから麻衣美ちゃんと2人で着替えを終えて更衣室から出て来た時だった。


不意に見知らぬ男性から声をかけられた。


「ユメノ、ちょっといいか?」


50代くらいのその男性は小太りであごひげを生やしている。


あたしは戸惑って麻衣美ちゃんを見た。


「神崎さん、こんにちは」


麻衣美ちゃんが丁寧にお辞儀と挨拶をする。


「やぁ、麻衣美。調子はどうだ?」


「ユメノお姉ちゃんに色々教えてもらっているおかげで、とっても調子がいいです」


「そうか。それならよかった」


神崎という男性は笑顔を向けて麻衣美ちゃんに手を振った。


麻衣美ちゃんは神崎さんにお辞儀をして、あたしに「バイバイ」と、手を振ってレッスン場から出て行った。


その後ろ姿を見送ったあたしは不意に不安に駆られた。


知らない場所で知らない男性と取り残されてしまったのだ。


まるで迷子になった子供の気分だ。


「行こう」


神崎さんがそう言うので、あたしは仕方なく後に続いたのだった。
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