目覚める度に、傷ついて
☆☆☆

連れて来られた先はさっきのレッスン場だった。


今は電気を消されていて中には誰もいない。


「今日のレッスン見てたよ」


そう言われて緊張が走る。


体が動くままに任せていたので、あたしがユメノじゃないと感づかれたかもしれない。


あたしは警戒して神崎さんから少し身を離した。


「なかなか良くなってきてるじゃないか」


その言葉にあたしは驚いて目を見開いた。


「あ、ありがとうございます……」


ぎこちなくお礼をいい、笑顔を浮かべる。


今日のあたしはユメノじゃない。


これがユメノ本人ならもっともっとレベルの高いダンスを踊れたはずだ。


この人、本当に今日のレッスンを見ていたんだろうか?


不信感が胸をよぎった。


次の瞬間だった。


あたしの体は神崎さんの両腕によって抱きしめられていたのだ。


咄嗟のことでなんの反応もできなかった。


神崎さんの服に染みついているタバコのにおいが鼻先にある。
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