目覚める度に、傷ついて
両親は完全にあの男を信用しているようだ。


他にも何人の子が同じ目にあっているのかわからない。


きっと、あたしだけじゃないはずだ。


「今日、神崎さんに抱きしめられた」


さすがに、出来事を思い出して口に出すのは緊張した。


心臓がドクドクと鳴っていて、まるで悪い事をした時のような気分になる。


だけど大丈夫。


あたしは悪い事なんてなにもしていない。


あたしは被害者なんだから、堂々としていればいいんだ。


自分にそう言い聞かせて背筋を伸ばした。


「抱きしめられた……? それって演技のレッスンで?」


母親にそう聞かれたので「違う!!」と、大声を出して否定していた。


娘が一生懸命告白をしているというのに、まだ信じられないという表情を浮かべている。


それほど神崎さんは上手に両親に取り入っていたのだろう。


そしてユメノも、何も言わずにずっと耐えていたのだ。


「ユメノ、しっかり説明してみなさい」


今までソファに座っていた父親が立ち上がってそう言った。
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