目覚める度に、傷ついて
☆☆☆

父親の運転する車は大きな施設へと向かっていた。


途中コンビニによって車の中でおにぎりを買って食べたのが朝ご飯だ。


施設周辺には沢山車が止まっていて、入口には出店が出ていた。


なにかイベントがあるのかもしれない。


「さすがに多いな」


駐車場で散々迷った挙句、一番遠い場所に停めるしかできなかった父親はため息交じりにそう言った。


「今日は無料のコンサートですもの。多くて当然よ」


母親が答える。


無料のコンサート?


あたしは首を傾げながら2人の後を追いかける。


入口前の屋台を通り過ぎて入口で何かのチケットを見せ、中に入る。


普段からフリーマーケットや車の展示などのイベントに使われているこの施設は、学校の体育館2つ分くらいの大きさがある。


その会場内にはすでに多くの人たちが集まってきていて、隅っこの方にしか開いている場所がない。


あたしたち3人は人ごみに紛れないように気を付けながら、会場の隅に立った。


下にはビニールシートがひいてあって座れるようになっているけれど、みんな立ったまま大きなステージの方を見ていた。


「朝早くから出て来たのにこんなに多いとは、さすがだなぁ」


父親は感心したようにそう呟いている。
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