目覚める度に、傷ついて
☆☆☆

夏斗の家は学校のすぐ裏手にあった。


太陽の光は当たらないが、学校まで徒歩1分ということでギリギリまでのんびりしていられる。


ご飯を食べて着替えをしてテレビを見ていると、夏斗のお母さんが慌ただしく家事をしている。


あたしも少し手伝おうかと思い立ち上がった。


大きな洗濯カゴを持って階段を上っていく母親についていくと、ベランダに出た。


「ちゃんと乾くの?」


一緒に洗濯物を干しながらそう聞くと「風通しはいいから乾くよ」と、返された。


ベランダから下の道を見ていると制服を着て登校している生徒たちの姿はチラホラと見える。


部活動をしていたり、勉強熱心だったりする生徒たちだろう。


時間にはまだまだ余裕があった。


カゴの名からズボンを引っ張り出した時、ポケットから何かが落ちた。


カランッと小さな音を立てたそれに視線を向ける。


「あんた、こんな大切なものをズボンに入れっぱなしにしてたの?」


母親が呆れたようにそう言って、落ちた物を拾った。


あたしは目を見開いてそれを受け取る。


夏斗のズボンから落ちた物。


それはあたしが、ちゃんとイツキだった頃に自分で作ったストラップだったのだ。


透明とブルーとピンク色のビーズを使った、お気に入りのストラップ。


先端には勾玉が揺れている。


見間違いなんかじゃなかった。


だって、あたしはこれをスマホにつけて毎日触れていたのだから。


「なんで、これがこんな所に……?」
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