目覚める度に、傷ついて
☆☆☆

数時間後。


あたしは灰色の部屋の中にいた。


家で起きている事をすべて説明した後、あたし自身も捕まってしまったのだ。


赤髪の男たちがドラッグを使っていたということは、司だって使っていたと言う事だ。


あたしはベッドに横になり、ボンヤリと灰色の天井を見上げていた。


こうして見ていると司の部屋の天井を思い出す。


イツキだった頃のあたしは、あたしこそが世界で一番不幸だと思っていた。


あたしほどかわいそうな人間はいない。


本気でそう思い込んでいた。


両親に愛され、夏斗にも愛されていたというのに、全く見えていなかったのだ。


それに比べて司はどうだろう?


小学生の頃イジメに遭い、それを助けてくれた人間が偶然悪の道に踏み外し、司も転げるように悪の道に進んでしまった。


気が付けば司の周りは誰もいなかった。


両親も学校も助けてはくれない。


いるのはあの赤髪の男だけだったんだ。


助けてほしいと手を伸ばした時にその手をつかんだのはいつでもあの男だったんだろう。
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