目覚める度に、傷ついて
「どうしたの奏。あんたいつもミカの財布とってたじゃん」


穂月が不思議そうな表情を浮かべてあたしを見て来た。


そうなんだ……。


奏はあたしからだけじゃなく、ミカちゃんからもお金を奪っていたんだ。


あたしは床に座り込んだまま動かないミカちゃんを見て胸が苦しくなるのを感じた。


グッと下唇を噛みしめて涙をこらえる。


ここで妙な行動に出ればあたしがイツキだとバレてしまうかもしれない。


あたしは無言のままミカちゃんに近づいた。


ミカちゃんがビクリと体を震わせてあたしを見上げる。


その表情はすっかり怯え切ってしまっていた。


普段のあたしもきっとこんな感じなんだろう。


あたしは右手をミカちゃんへ向けて差し出した。


奏がお金をせびる時によくやる仕草だった。


ミカちゃんは震える手でポケットの中を探った。


あぁ、ミカちゃんもあたしと一緒なんだ。


奏にお金を取られるようになってから、財布は常にポケットに入れている。


いつ鞄を漁られるかわからないからだ。


奏なら人の鞄から財布を盗みだす事もするだろうと、警戒しているからだ。
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