目覚める度に、傷ついて
☆☆☆

「今日の奏ってなんか変」


年齢を偽ってカラオケ店に入るや否や、穂月はそう言って来た。


一瞬心臓がドキンッと大きく跳ねる。


嫌な冷や汗が流れて行くのを感じる。


「え? そ、そうかな?」


どうにかごまかそうとしてほほ笑んでみるけれど、顔が引きつっているのが自分でもわかった。


「そうだよ。手はひっぱたかれるし、カラオケの約束も忘れてるし」


そう言い、ジロリとあたしを睨む穂月。


「ご、ごめん。最近ちょっと忙しくて、疲れてて……」


慌てて適当な嘘をつく。


「あ、わかった。明(アキラ)君でしょぉ?」


マイクを持ったユメノがニヤリと笑ってそう言った。


明?


聞いたことがない名前だ。


だけどユメノのニヤついた表情から、奏の恋人か好きな人かという事がわかった。


「あぁ、そういうこと? 奏はまだ恋の病?」


穂月にそう聞かれて、あたしは「う、うん。そんな感じかな?」と、頷いた。


よくわからないけれど、そう言う事にしておいた方がよさそうだ。


「明君なんてやめとけばいいのに」


ユメノはマイク越しにそう言って来た。


「恋は盲目なんだから仕方ないじゃん。ね、奏?」


「そ、そうだね」


あたしは首を傾げて、そう返事をしたのだった。
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