目覚める度に、傷ついて
もう外は暗くなっている。


いつものあたしならとっくの前に家に帰っている時間帯だ。


『あれ? ダメだった?』


驚いたような声が返ってくる。


奏はこんな時間帯にも普通に出歩いているのだろうか?


そう言えば、スマホを確認したときに両親からの連絡は来ていなかった。


放任主義なのかもしれない。


それなら、今から少しくらいなら明という人と会う事は可能だ。


だけど、今日のあたしは奏じゃない。


明という人と会ってどうすればいいのか見当もつかない状態だ。


「えっと……今日はその、宿題が……」


そこまで言い、しまったと感じる。


今朝の事を思い出すと、奏は宿題を重要視していないようだった。


『宿題? 奏が?』


案の定、明という人は怪訝そうな声を出している。


「あ、じゃぁ、少しだけなら」


咄嗟にそう言ってしまった。


『ありがとう。じゃぁ、ファミレスで』


それだけ言うと、電話は切れてしまったのだった。
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