目覚める度に、傷ついて
☆☆☆

教室内でぼんやりと時間を過ごしていると、奏が登校してきた。


奏は制服の下にハイネックのサマーセーターを着込んでいる。


その姿にあたしは思わず「奏!」と、声をかけていた。


同じメンバーの浩志から声をかけられるのは不自然じゃないはずだ。


だけど奏はあからさまにしかめっ面を浮かべた。


その表情はあたしが受けていた眼差しと同じもので、一瞬たじろいてしまう。


それでもあたしは奏に近づいた。


「今日、顔色が悪いけどどうした?」


できるだけ男っぽい口調を心掛けてそう聞いた。


「あぁ……うん。ちょっとね」


そう言い、席に座る奏。


「ハイネック……」


「なによ?」


「いや、暑くないのかなって」


しどろもどろにそう質問をする。


どうやらイジメメンバーの中にも上下関係が存在していて、浩志は奏よりも下のようだ。


奏はさっきから笑顔をさえ見せてくれない。
< 45 / 202 >

この作品をシェア

pagetop