目覚める度に、傷ついて
「……昨日1日の記憶がないの」


ため息交じりにそう言った奏に、あたしは小さく息を飲んだ。


「それ……本当に?」


「信じないならそれでいいけど」


「い、いや。信じるよ」


「気が付いたら、自分の部屋で首つってた」


そう言い、奏はハイネックの首元を指で引っ張って見せた。


首元には確かにロープの後がクッキリと残っている。


昨日の出来事はすべて本当だったんだ。


あたしはゴクリと生唾を飲み込んだ。


体から嫌な汗が流れて行くのがわかる。


「な……んで……」


どうにか声を絞り出すけれど、それは文章にはならなかった。


「あたしだってわからない。気が付いたら首にロープが食い込んでいて、足は空中に投げ出されてた。だけど意識はあったから必死で家具の上に乗ったの」


奏の言葉にあたしは首を吊った場所の近くに本棚が置いてあったことを思い出した。


あの本棚がなければ奏は本当に死んでいたかもしれない。


「奏は……死にたかったのか?」


「はぁ? そんなワケないじゃん」


奏が眉間にシワを寄せてそう言った。


でも、その言葉はきっと嘘だ。
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