目覚める度に、傷ついて
あたしは先生に連れられて教室を出た。


先生は人のいない廊下の端まで移動をすると、ようやく立ちどまった。


生徒に聞かれたくないのなら職員室を使えばいいのにと思う。


しかし、先生の口から出て来たのは意外な言葉だった。


「お父さんにありがとうって伝えて置いてくれる?」


「へ……?」


あたしはキョトンとして先生を見た。


先生はさっきまでの優しい笑顔ではなく、無表情でこちらを見ている。


「あなたは何も知らなくていいと言われると思うわ。だから、そのありがとうとだけ伝えてくれればいい」


「え? どういう意味ですか?」


浩志はなにも知らなくていい?


一体何のことだろう。


「先生からの話はそれだけです」


そう言うと、先生は背を向けて行ってしまったのだった。


あたしは先生の言葉の意味が分からずに、茫然とその場に立ち尽くしていたのだった。
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