目覚める度に、傷ついて
「大切なお金なんだろ?」


あたしはミカちゃんの方を見てそう言った。


ミカちゃんは青い顔をしたまま小さく頷く。


「こいつの金なんて大切じゃないってば。何言ってんの浩志」


奏はそう言い、おかしそうに声を上げて笑った。


まだあたしが本気だと言う事に気がついていないようだ。


「あの男に渡す金の方が大したことないだろ」


そう言うと、奏は一瞬にして笑顔を消した。


体が凍り付くほどに冷たい表情になる。


それでもあたしはひるまなかった。


「おかしいだろ、あの男。なにが1時間1万円だよ。ちょっと話術があるだけのニートだろ」


「なんで、あんたがそんな事知ってんのよ……」


奏の声が小さくなる。


あたしは少し驚いて奏を見た。


穂月とユメノは明さんの存在を知っていたから、てっきり浩志も知っているものだと思っていた。


浩志は自分よりも格下だから、黙っていたのかもしれない。


「いいから、返せよ」


あたしはそう言い、奏の手から封筒を奪った。


男の力は想像よりも強かったようで、封筒は簡単に手の内に収まった。


あたしはそれをミカちゃんに渡す。


ミカちゃんは青い顔をしたまま「ありがとう」と、小さな声で言うと、すぐに逃げて行ってしまった。
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