目覚める度に、傷ついて
咄嗟に逃げようとしたらしいが、逃げればこの2人は万引きをしたことをバラすだろう。


デパートの監視カメラを確認されればアウトだった。


奏は逃げる事もできず、その場で立ち尽くしていた。


2人の男が奏の手を引いて歩き出そうとする。


全身に寒気が走った、その時だった。


様子を見ていた明さんが声をかけてくれたそうだ。


見た目は2人に負けず劣らず派手だったが明さんは1人だった。


『俺の彼女になんか用事?』


そう言って近づいてくる明さんを見て、2人の男はすぐに奏から手を引いたのだそうだ。


後から聞くとその2人組は明さんの後輩だったそうだ。


「あたしは明に恩ができた」


奏はそこまで話をして大きく息を吐き出した。


ここまで聞くだけだと、やはり奏は明さんに恋をしているように感じられた。


奏にとって明さんは救世主だ。


だけど、実際はそうじゃなかった。


『君、万引きしたんだってね』


近くのファミレスに移動した明さんと奏。


『はい……』


『黙っててあげるから、安心しなよ』
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