目覚める度に、傷ついて
「あのさ、去年のパーティーに来てた大江明って人さぁ」


そう言った瞬間、父親はしかめっ面を浮かべた。


「あいつは今年は呼ばないぞ。あのバカ息子、ミュージシャンになるとか言い出して家を出たらしいじゃないか」


「そう……そうなんだ」


あたしは何度も頷いた。


さすが父親、その辺の事に関しても情報はもっているようだ。


それなら話が早い。


あたしは奏から聞いた話をできるだけ丁寧に話して聞かせた。


聞いている間中、父親は無言で葉巻を吸い、紫色の煙を吐き出していた。


「あのバカ息子、とうとう勘当されたか」


あたしの話を最後まで聞くと、そう呟いて葉巻の火を消した。


「あの家もまぁまぁの資産家だ。息子1人育てていくくらい何の問題もない。それが中学生の子供に金を請求するようになったということは、家との関係は完全に切れたということだろうな」


「どうすればいいんだろう……」


「お前はどうしたいんだ?」


そう聞かれて、あたしは父親を見た。


シワの奥の目がキラリと光っているように見えた。
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