目覚める度に、傷ついて
「俺は、奏を助けたいと思うんだ。奏は苦しんでる」


「だけどその女子生徒は他のクラスメートをイジメてるんだろう?」


その言葉にハッとして父親を見た。


奏がイジメっ子であることは伝えていない。


父親は学校関係者……おそらくは担任の先生から事情をすべて聞いているのだろう。


「そうだけど……。苦しみがなくなれば人をイジメる必要だってなくなるだろ?」


そう言うと、父親は口角を上げて笑って見せた。


「お前はまだまだ生ぬるいな。その程度でなくなるイジメと、そうじゃないものがある」


そうかもしれない。


自分のストレスのはけ口としてイジメをしている場合なら、そのストレスをなくせばいい。


だけど、本当に純粋に楽しんでイジメを行っている場合は違う。


イジメが楽しくて仕方のない人間はきっと存在している。


「でも……でも、奏は違うと思うんだ」


あたしは絞り出すようにそう言った。


どうしてこんなに奏の事を助けたいのか、自分でもわからない。


奏の苦しみなんて掘っておけばいいのに、そうできない自分がとても不思議だ。


「そうか。それなら私から大江に直接話をしてみよう」


その言葉にあたしはパッと目を輝かせた。


「自分の息子の面倒くらい、自分で見ろ。そう伝えてやる」


「本当に!?」


「あぁ、もちろんだ。だが、それから先はどうするかは自分で決めるんだぞ? 大江の息子が簡単に女子生徒から手を引くかどうか、私にはわからない」
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