目覚める度に、傷ついて
☆☆☆

それからあたしは1人で屋敷を出て奏の家に向けて自転車をこいでいた。


父親はもう明さんの両親に連絡を入れてくれているかもしれない。


だけどそれで終わるかどうかはわからない。


奏をしっかり助けるためには、あたしが自分で動かないといけない。


直感的にそう考えて、勢いだけで奏の家に到着していた。


息を切らして自転車を止める。


奏の家は明るい電気がついている。


玄関先まで来て、呼吸を整える。


ここまで来たけれど何をどう伝えればいいのか何も考えてこなかった。


奏を救いたいと言う気持ちに変わりはないが、チャイムを押す手がどうしても動かない。


このまま玄関先で立ち尽くしているわけにもいかないし、あたしは数歩後ずさりをして玄関から離れた。


日を改めよう。


今度、もうちょっとじっくり考えてからまた来ればいい。


そう思って自転車へ体を向けた時だった。


玄関が開く音がしてあたしの体は固まった。


玄関から出て来たのはラフな格好をしている奏だった。


奏はあたしの姿を見つけると驚いたように目を丸くした。
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